浮遊都市のバリアフィールドが割れる。そう、それこそ某研究所のバリアの如く。
「バリアが……!!」
「よしっ、行くぞ!!必ず生きて戻るぞ!!」
「もちろんよ。だってビックサイズのケーキが待ってるんだから…!!」
「………は?」
一瞬、変な間が空いたものの。すぐさま持ち場の位置から駆け出す。
目指す場所はただ一つ。浮遊都市の中心部――――!!
浮遊都市の中心部目指して、ただ突き進む。
そのまま飛んでいっても良いのだが、それでは陸戦兵の彼を置いてしまう。だから移動速度を調整しつつ、二人して中心部を目指す。
頭上にある無数のレーザー砲やプラズマ砲がそれを阻むが、後ろからの援護射撃が次々とそれら砲台を落としていった。
その大半はジェノサイド・キャノン並に物騒な代物であるジェノサイド砲を持った誰か(実は戦車兵)による砲撃で、数えてみたら15秒間隔で大きな爆発音が起こっていたりする。
なんとなく気になるが、それでも余所見をしている暇はない。
やがて間もなく、後方支援の相方の彼女から通信が届いた。
「先輩、気をつけてください!!近衛UFOが出てきてます!!」
ふと見上げれば、皇帝都市の近衛UFOが一斉に降下を始めていた。
「雑魚に構うな!!邪魔な奴だけ落としていけばいい!!」
「りょ、りょうかいっ!!」
一瞬どうしようかと思うが、陸戦兵の言葉で我に変える。そう、雑魚に構っている場合ではない。少なくともNORMAL世界のここでは雑魚なのだ。
そんなわけで、ただただ進む。時折、正面に現れる奴だけを優先し、あとは無視。けれども相方の狙撃による援護もあって近衛UFOの攻撃も最初だけ。いつの間にか、円盤発進口もいくつか潰されていたのである。
やがて、中心部が間近に見えてきた。しかし、そこで思わぬアクシデントが発生した。
「そ、そんな…!?」
「ちっ、もう一つバリアがあったのか…!!」
外部とは別に、中心部もバリアで覆われていたのだ。これでは中心部への攻撃ができない。
けれども、こう言うときこそ冷静にならなければいけない。と言う訳で、まずは深呼吸。
すーはーすーはー。よし、落ち着いた。
落ち着いて見回せば、しっかりとバリア発生装置があった。となれば、話は簡単。アレを壊すだけ。
出来る物なら、相方さんや戦車兵の人。もしくはジェノサイド砲を連射している人(戦車兵と同一人物)に攻撃してほしかったが、それは不可能だった。
近衛UFOの一部と戦闘に突入し、そちらの対処で手一杯だとの通信がいつの間にかあったのだ。
まぁ、それなら二人で壊せばいいだけなんだけど。
「発生装置があるから、二人で手分けするわよ!!」
「ん?よし来た。じゃ、俺は右に行く。あんたは左だ。……壊したら真ん中で落ち合おう」
互いに頷き、二手に別れる。飛行ユニットを全開にして発生装置を目指す。
時々近衛UFOが来るが、もはや敵ではない。邪魔な奴だけを片っ端から撃ち落し、やがて見えてきた発生装置を破壊。
偶然にも、陸戦兵の彼と壊すタイミングが同じだったらしく、再びバリアが某研究所の如く気持ちよく割れる。
これで突破口は開けた。すでに中心部は目と鼻の先だ。
けれども、そう甘くはいかなかった。突如中心部の周辺から何かが迫り出し、そこから幾つものレーザーが繰り出されたのだ。
「――――ゆ、誘導レーザーっ?!」
条件反射的に瓦礫の側へと滑り込んでやり過ごす。
誘導性能はそれほど高くもないようだし、ディロイのレーザーほど悪質でもない。それでも厄介なことには違いない。
いや、迷っている場合ではない。
誘導レーザー。よけれないのなら耐えればい。ディロイの照射レーザーみたいに瞬く間に体力を奪われるわけでもなければ、バゥみたいに悪質かつ卑怯極まりないわけでもない。
終わりよければ全てよし。手段など構っている場合ではない。
と言う訳で、突撃。レーザーに当たっても怯むことなく、ただ突き進む。
この辛さ。浮遊都市撃墜後に待つ幸せに比べれば――――!!
やがて誘導レーザー砲が射程に入るや、速攻で攻撃をして黙らせる。
それから間もなく、少々ボロボロながらも陸戦兵の彼も反対側から走ってくるのが見えた。どうやら、同じ方法をとったようだ。
今だ周囲にレーザーなどが振り注ぐ中、静かに見上げると――
――浮遊都市の中心部があった。
やがて、静かに開くハッチの中へ、静かに狙いを定める。
これを倒せば――――。もうあのでっかい蜘蛛やムカデともさよならだ。
そして後には、ウェディングサイズのケーキが待っている!!
「今度こそ、最後にしてやるっ!!
「これでとどめっ!!!!」
イクシオン・マーク4とAR−100F。高威力の粒子弾と実弾が一斉に開いたその場所へと叩き込まれる。
こんなもので壊せるのか…と突っ込みたい気持ちもあったが、どうやら本当に弱点らしく、不意に周囲に降り注いでいたレーザーが止まった。
「か、勝った?」
「みたいだな……。今度こそ、終わりだ」
とても長い戦いだった。8ヶ月に渡る辛く長い戦い。それが今、終わった。
緊張の糸がぷっつり切れたみたいに力が抜ける。
しかし、喜ぶのはまだ早かった。
中心部を破壊された浮遊都市が、ゆっくりと降下してきたのだ。
「…………え?」
「………まぁ、当然だろうな…」
相方の彼女と戦車兵さんの事が気になるが、あの二人は作戦区域の端にいたから恐らく間に合うはず。
しかし、私達はとてもじゃないが―――――間に合わない。
「……これってちょっとずるいわよねぇ」
最後の最後でこんなオチとは。これじゃあ、楽しみにしていたウェディングサイズのケーキを食べるのも、もはや不可能だろう。
最後まで諦めないのがモットーとは言え、これでは諦める以外に打つ手はない。
あぁ、いろいろしたいことがあったのになぁ…。そんな事を考えつつ見上げれば、すでに目前まで浮遊都市が迫っていた。
2020年1月15日。
インベーダーの浮遊都市は、EDF隊員の活躍により撃墜。
こうして地球は、インベーダーの脅威から救われたのだった。
しかしながら、中心部への攻撃を行った陸戦兵およびペイルウイング二名は―――――