EDF防衛記録

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　インベーダーの陸戦兵器を迎撃に向かった第７２戦車隊が壊滅した。
　理由は、敵の鏡円盤（シールド・ベアラーと言うらしい）が護衛していたため、長距離からの砲撃が通用せず、さらに近距離で弾を跳ね返されてしまい、なす術もなかったらしい。
　敵はそのまま市街地へと侵入したため、市街にて迎撃を行う事が決定。
　すぐさま現場へと急行したのだが……。

「あれ……？」

　そこにはすでにインベーダーの姿はなかった。ただ、一体どんな激戦が繰り広げられたのか、そこは廃墟と化した街並みと、鏡円盤と歩行戦車ダロガの残骸だけが転がっていた…。

「一体誰が？ もしかして、あの伝説の英雄…？」

　話は３０分前に逆のぼる。

　幾つもの戦車が残骸と化した中、一台の戦車ギガンテスが後ろ向きに爆走していた。
その後ろを追撃する鏡円盤達。
　その一台はまさに第７２戦車隊の生き残りだった。
　それが破壊されれば、言うまでもなく第７２戦車隊は全滅である。しかし、彼は諦めていなかった。
　後退しつつ飛んでくる鏡円盤に砲撃。だが跳ね返された弾がすぐ側に着弾する。

「くそっ。なんて奴だ！！だが、戦車だろうとやれば出来るんだーっ！！」
　走る棺桶。誰かが呼んだか忘れたが、戦車ギガンテスはＥＤＦ内の一部でそう呼ばれている。まぁ、否定はしない。図体が大きいせいで被弾も多いし、重そうな外見の癖にちょっとした凸凹ですぐに仰向けにひっくり返る。
　しかも砲撃と操縦を一人でこなさければいけないし、砲撃は目測が命。
　こんなので敵陣に切り込めば、ボコボコにやられて戦車は大破。後にはたった一人で敵陣に囲まれると言うビックなオマケもついている。
　戦車よりも脆いバイクは優遇されているのに、火力もあって頑丈な戦車はなぜか人気がないのだ。

　しかし、彼は戦車が好きだった。毎日ワックスで磨き、上司には内緒でチューンナップもした。装甲の傷を直すために、溶接関係の資格もとったほどだ。さらにシミュレーションで欠かさず訓練を行った。

　もし、ここで全滅すれば戦車の株は下がってしまう。それを阻止するため、なんとしてもこのインベーダーを倒さなければいけないのだ。

　懸命に後退しつつ砲撃する。運良く当たって撃墜もするが、このままでは埒があかない。

「やはり、戦車では勝てないのか…！！」

　コントローラーを握りつつ、悔し涙すら浮かべる。
　そんな時だった。彼は偶然に偶然を重なった奇跡とも言える光景を目にした。

「…………！！」

　その瞬間。彼の中で何かが始めた。それこそ土曜日夕方の時間帯のアニメで見た、自由と言う名のロボットに乗ってるパイロットの如く。

「まだだ、まだ終わりなじゃない…見えたっ！！」

　再び爆走を開始。そしてビルとビルの細い路地を駆け抜ける。壁にも擦らず全力疾走で抜ける運転技術は大した物である。そしてビル群を抜けたところで１８０度回頭。
　案の定、鏡円盤はまっすぐにこちらへとやってくる。だが、それこそが彼の狙いだった。

　直接狙って駄目なら間接的に狙う。鏡円盤は決して狙わない。どこかのビルの近くに近づいたその時に、必殺の一撃を叩き込むのだ。ビルに。

　ギガンテスの主砲が火を吹き、ビルに直撃する。その爆発に巻き込まれて落ちていく鏡円盤。言うまでもなく、ビルも崩れているのだがそんな事をは気にしない。どっかの陸戦兵もペイルウイング隊員もやっている事なのだ。戦車兵だけやってはいけないという決まりはない。

　やがてビルがなくなると、再び移動して繰り返し。その作戦はかなり有効だったらしく、しばらくの奮戦の後…ようやく鏡円盤を全滅させる事が出来た。

「隊長、やりました。戦車でやりましたよっ！！」

　戦車の天敵と思われた鏡円盤を撃墜し、一人感慨にふける。まだ、歩行戦車が残ってはいるが、鏡円盤のせいで苦戦したのだ。勝てない相手ではない。
　彼は再びコントローラーを握ると、再び戦車を走らせ始めた。

　ある時は（邪魔なビルを破壊して）射線を確保して遠くから狙い…。
　ある時は肉迫し、足元をすれ違いざまに砲弾を叩き込む…。
　その戦いぶりは、実に見事なものだった。

　そして、苦心の末、市街地にいたインベーダーを全滅させた彼は、そこでようやく気がついた。
　廃墟と化した街並みに。

　もしかしたら、インベーダーにやられるよりも被害が出ているかもしれない。

「…………」

　しばしの沈黙。そして彼は再び戦車を走らせ始めた。ある意味、逃げたとも言う。
　ペイルウイングの彼女が現場に到着する、３０分前の出来事である。

　そして、今回の一件は…伝説の英雄の功績になってしまったのである。

To Be Countinue....

■ おまけ■
試しに戦車オンリーで挑戦してみました。戦車がやられたら、再出撃。
本当に大変でした。コツを掴むまで、すごく苦労しました。一体、何回やられた事やら…。
これが市街地でなければ、たぶん勝てなかったでしょう。
第７２戦車隊が壊滅したのもよくわかります（汗）