「巨大生物がこんなに…!?」
それはまさに悪夢だった。逃げ惑う人たち、そしてなぜかビックベンにたむろっている蟻たち。
だが、EDFの隊員としてそれを見過ごすわけにはいかない。市民を守るために、そして地球を守るために私達はいるのだ。
本日の装備は、近接戦用のレイピアと炸裂プラズマ弾を撃ちだすE1プラズマ・ランチャーの二つ。と言うか、基地にはこれしかなくて選択の余地などなかった。陸戦兵にはアサルトライフルとロケットランチャーと手榴弾2種類と4つも用意されていたのに、どうして私たちの方だけ二つ? もしかして、今だに男女差別の風習でも残っているのだろうか?
まぁ、気にしても仕方ないのだけどね。
蟻との距離は離れている。とはいえ、さすがに敵陣のど真ん中に突っ込む度胸は私にはない。
ペイルウイング隊員のアーマースーツは、陸戦兵の物よりも防御性が薄い。噂に聞くところによれば、半分程度しかないらしい。
もしかして肌の露出部分が少し多いからだろうか? 陸戦兵の物に比べて、私たちの少し肩が出たデザインでmなぜかミニスカートだ。足はオーバーニーみたいな感じだが、ふくらはぎの周りは出ている。
…このアーマースーツって戦闘用の服なのかしら…? むしろ、キャンペーンとか、そっちの方で着ても良さそうな気が……。
やはり上層部の趣味…? そんな考えが過ぎるが、今はまず目の前の脅威を取り除くのが先決だ。文句なリ抗議なりは帰ってから幾らでも言えるしね。
ともかく防御面が弱い以上、近づくなんて言語道断。それなのに近接武器を作る司令部は絶対間違っている。時折、しょうもない武器を作ると有名な開発部だが、何もいきなり持たせるなんてどうかしてる。
そんなわけで躊躇うことなくE1プラズマランチャーを持ち、ビックベンにたむろう蟻を優先的に狙い撃った。
緩やかな弧を描いて飛んでいくプラズマ弾。真っ白い閃光と共に宙を舞うアリ達。微妙に弾速は遅いけども、エネルギー効率も決して悪くはない。
エネルギー残量に注意しつつE1プラズマランチャーをさらに撃つ。 爆発に吹き飛ばされ、やっぱり空を舞う蟻たち。見ているこちらも爽快感がある。ストレス解消に良いかしれない。
どうやらロンドン市内全域に出没したらしく、味方内の通信が激しく交錯する。やはり、他の場所では隊員にも被害が出ているようだ。
それでも助けに行くことは出来ない。今は、この場を凌がなければどうすることもできないのだ。
とりあえずE1プラズマランチャーを撃ちまくる。途中で大きな時計台が音を立てて崩れたのが見えた気もするけど……知らない。プラズマ弾が幾つも時計台に当たってた気もするけど……私は悪くない。
隊長も巨大生物と交戦して、一人でも多くの市民を救えと言ってたし。救うためには巨大生物は倒さなければいけない。そのためには、多少の犠牲はやむをえないのだ。
「あ!?」
と、そこで突然プラズマエネルギーユニットが強制冷却モードに入った。これは自分のミスだ。エネルギー配分を考えず、ついつい撃ち過ぎてしまった。
だって、蟻さんが空に舞うのが面白いんだもの…。
気がつけば、好機と言わんばかり蟻が周囲を囲む。強制冷却はまだ終わってない。
「どうしよう…。このままじゃ――――」
走って逃げることは出来ない。プラズマエネルギーユニット自体が重くて、いつもみたいに早く走れないのだ。
「………これは…」
これまでか。そう思いかけた時、もう一つの武器レイピアの存在を思い出した。射程は短いが、威力は高い。渡された近接武器。E1プラズマランチャーが使えない以上、これに頼るしかない。
何もないよりは絶対にマシだ。周りを囲まれ絶体絶命。でも泣かない。だって、私、女の子もだん。
「これでもくらいやがれっ!!」
あ、ちょっと地が出ちゃった…。まぁ、周りには誰もいないから大丈夫。目撃者がいたら、その時はその時でね?
「って……うそ……」
レイピアの性能は予想を張るかに上回る物だった。
秒間360発のプラズマアーク刃が一瞬にして蟻を切り刻む。そのまま身を翻して周囲を薙ぎ払うと、瞬く間に周りを囲んでいた蟻は全滅してしまった。
………なにこれ。破壊力がありすぎじゃない…? はっきり言って、E1プラズマランチャーよりも使えるかもと思ったほどだ。。近づかなければいけないとは言え、この威力は反則かもしれない。
やがて強制冷却が終わった事を知らせる音が響く。
よくよく考えれば、ペイルウイング部隊は高機動が売りなのだ。ならば、それを生かした戦い方をするべきではないだろうか?
ヒット&アウェイ。それこそがペイルウイングの醍醐味!! もっと早く気がつくんだったわね…。
ガチャリと構え、残った蟻へと視線を向ける。もうE1プラズマランチャーは使わない。
そう、このレイピア一本あれば充分だ。なぜか思わず口元に笑みを浮かべてしまう。けどもレイピアの性能は予想を張るかに裏切るほのものだったのだ。見た目に惑わされちゃ駄目ってこう言う事なのね。
さて、それじゃあ続きと行きましょうか♪
空を飛び、すれ違いざまにレイピアを決める。飛行ユニットとレイピアの組み合わせは予想以上の物で、私はなんとかこの場を凌ぐ事に成功したのであった…。
ただ、レイピアの真髄に気がついて思わずニコリと笑みを浮かべしまった私を見て、なぜか残っていた蟻が一斉に後ずさったように見えたのは、きっと気のせいだと思いたい。