人通りのなくなった深夜の時間。
なぜか街往く人はいないのに、明かりだけは煌々と照っている夜の街を一台の戦車が走っていた。
第57戦車隊1番車輌。そして、元第72戦車隊3番車輌。
かつて、攻撃を反射する強敵と遭遇し、苦心の末に撃退。そしてその後の被害状況に真っ青になって逃走。さらに、勝手にギガンテスを持ち出してのドライブ中に新種の巨大生物と遭遇・殲滅。その後、またしてもあまりの被害状況に、やっぱりその場から逃走。
さらに試運転中に敵占領部隊と遭遇して撃破。その際にまたしてもやってしまい逃走。すでに三つの街を廃墟に変えているあの戦車である。
「……せめて、ライトくらいつけてほしいな…」
街中を走りつつポツリと呟く。
いろいろと問題の多いギガンテスだったが、ライトすらついていなかったりする。
それでも夜を走れるのは、街が明るいおかげだ。
そして、事件は突然に起こった。
「う、うわぁぁぁっ!?」
突然上空から黄色い液体が雨あられと降り注いだのである。
日頃から巨大生物と戦っているのもあって、条件反射的にバックギアに入れて後退し、その場から退避する。
「な、なんなんだ…?」
突然の事にしばし困惑する。だが、すぐに思い出した。
かつて遭遇したムカデみたいなのが、似たような攻撃をしてきた事を。
「あの時の奴か…?」
すぐにでも動けるように右のアナログスティックに指を添え、周囲を警戒する。
やがて、遠くの方を何かが横切った。
「……………ま、まさか……」
その姿を見た時、以前に聞いた話を思い出した。ムカデ型には短いのと、とてつもなく長いタイプの二種類がおり、特にその長い奴は強敵。あの酸の雨をまともに食らったら戦車の装甲でも数秒しか持たない…と。
「あれが、そうなのか…」
以前の短い奴とは次元が違う。その事を本能的に感じつつも、コントローラーを握る手に力が篭る。
あの反射円盤を筆頭に、赤い空戦艇など、戦車では不可能と思える敵を次々と倒してきた。そうする事によって、戦車の素晴らしさを知ってもらいたい。ただ、その一心で。
今度の敵も戦車では勝てるかどうかわからない。だがEDFの一員として、そして戦車乗りとして負けるわけにいかない。
再び夜の闇に、その姿が浮かぶ。
「さぁ、来いっ!!戦車乗りの底力見せてやるっ!!!」
120mmキャノンが火を吹く。外れた弾がビルを吹き飛ばす。
そして、大ムカデと戦車の壮絶な一騎打ちが始まった。
怒濤の如く降り注ぐ酸を後退して回避しつつ、攻撃のチャンスを伺う。
走りながら撃つよりは、止まった方が命中率が高いのは今までの経験で知っている。そして、何度か攻撃をかわすうちに一つの事がわかってきた。
大ムカデは酸をしばらく撃つと、少しの間攻撃が止むのである。
その一瞬を狙って120mm砲弾を撃ちこむ。
しかし、直撃を受けても大ムカデの猛攻は止まらない。
同じ箇所を当てれば、その部分を撃破できるだろうが、長いのと動きが速いので当てるのが精一杯。そのためダメージが分散してしまって思うように成果がでないのだ。
「また長期戦か……。だが望むところだ…」
以前の反射UFOの時も空戦艇の時も、長期戦の末の勝利だった。地道な努力。それこそが戦車で勝利するための一歩なのである。
やがて、その地道な努力が実ってきたのか、大ムカデのあちこちがちぎれて別行動を始め出した。
だが、ここでパニックになってはいけない。
冷静に、相手の攻撃になるべく当たらず、ただ地道に主砲を叩き込む。焦って運転をしくじったら、そこで終わりである。もしひっくり返ったりでもしたら始末に終えない。
道路をフルスピードで走り、距離が開くと同時に主砲を回頭。長距離からの砲弾をお見舞いする。
やはり命中精度はいまいちだが、数回に一回当たればいい方だろう。
さすがに幾つもの塊に分裂してからは、警戒が間に合わずに被弾してしまったりもした。それでも、持ち前の戦車ドライビングテクでダメージを最小限に押さえ―――
「これで止めだっ!!」
――苦心の末…ついに最後の一匹に主砲が炸裂した。
黄色い体液を撒き散らせて吹き飛び、絶命する巨大生物。
「や、やった…!!」
巨大生物の中でも、かなりの強敵とされる大ムカデの撃破。それは快挙ともいる出来事である。
まして、今回はリペアスプレーすら持って来ていなかった事を考えれば、その意義は非常に大きい。
今回も辛く苦しい戦いだったが、また一つ戦車の伝説を打ちたてた瞬間でもある。
そして、彼は気がついた。
気づかなければ良いのに、気づいてしまった。
目の前に広がる廃墟。
大ムカデを仕留めるために費やした砲弾がどれだけの物か、その全ては目の前に広がる光景が物語っている。
廃墟と化した街は、すで4つ目。あのフェイですらやったことのない快挙である。
だが、戦車から降りると小心者だったりする彼には、彼女のように開き直ったりする事はできなかった。
「…………」
しばしの沈黙。そして彼はアクセルを思いっきり吹かせると、一目散にその場から逃走するのであった。
それはEDFが現場に到着する、5分前の話であった。
To Be Countinue....
■ おまけ■
毎度おなじみ戦車兵=またまた戦車オンリーでの制覇。今回は大ムカデさん相手に奮闘。結構ボロボロにされましたが勝利しました。しかも今回はリペアスプレー未使用☆
しかし今回やって、改めて気づいたことですが、大ムカデの姿が黒い影となって見えるのは、すっごく怖いです。いや、マジで(汗)
本編中にもアップしてますが、もう一つの写真も下に出しておきますので、よかったら見てください。
・・・見難いですけどね(汗