04:魔虫の塔
自宅に戻った俺を待っていたのは、驚愕の事態だった。俺の家の方角に巨大な巣が出現していたのだ。
まさか…まさか!
そして、悪い予感は的中した。
お…俺の家が!
父さん!母さん!太郎!次郎!三郎…は俺だ、四郎!五郎!六郎…はいない!
いや、そんなのはどうでもいい、チョビは、チョビはどうした!?
家の中をうかがおうとしたその時、俺の頭上で不気味な羽音がした。やばい、気づかれたか。
すごい勢いで集まってくる羽蟻と、降り注ぐ酸。
やむを得ずその場を離れた俺は、羽蟻と交戦しつつ巣を撃破しようと試みた。
しかし、巨大な塔は揺らぐこともなく、破壊不可能であることを思わせた。おまけに、羽蟻は墜としても墜としても次から次へと湧いてくる。くそっなんてことだ。
その時、仲間の通信が入ってきた。奴らの本当の巣は地底にあるらしい。その後、通信は途絶えた。市民より弱いくせに変なとこに首をつっこむからだ。愚か者め。
ともあれ、こうなったら元凶を絶たねばならない。俺も地底に向かうことにした。
05:地下洞
地下鉄の駅から線路沿いに進む。ガキの頃、夜中に線路を渡り歩いたことはあったが、地下鉄に入ったことはなかった。新鮮だ。
なんてことを言ってる場合じゃない。みんなとはぐれてしまった。この一本道でどうやったらはぐれるんだ。困った。
まぁ任務は地下洞窟の正体を確認するだけだし、別にいいか。あいつらがいると足手まといなんだよね。
彼らの通信が入ってくる。
「こんな…こんな巣が東京中に広がっているのか!?」
「東京だけじゃないんだ…ロンドンも同じ状況のはず。以前奴らが出現したことのある場所はみんなこうなってると考えた方がいい」
「それってつまり…」
「そうだ…世界全土が奴らに汚染されてる。地球はもう人間の星じゃない、巨大生物の養殖場なんだ!」
よかった、実はみんなもう帰っちゃってて、俺一人で進んでるのかと思ったよ。
でも、地球を汚染してるのは俺達も一緒だよねー。
さらに先へ進むと、壁に巨大な横穴が開いていた。
っていうか、これってどう考えても奴らの仕業だろ。
そして聞こえてくる雀の音。チュンチュン。前から思ってたんだけど、あの蟻どもはどこからあの音を出してるんだろう?
途端、横穴から吹き出すようにして蟻の大群が噴出した。わひょー!
俺はAS-18Rをぶっ放しながら、通信機に向かって叫んだ。
「こちら三郎、巨大生物の群れと交戦中!奴らとんでもねえ数だぜ!」
応答はなかった。
ゴリアス1で一網打尽を狙うも、ゴムまりみたいな死骸が邪魔してなかなか撃ちこめない。えぇい腹立たしい!
奥へ進むと、予想通り奴らの巣窟であった。うわーなんて数だ…。
「こちら(聞き取れなかった)、巨大生物と交戦中!我々が…うあぁ…後ろからも来た!こっちだ!撃てえええぇぇぇ!わぁっうわあああぁぁぁ!」
あいつらも無事に遭遇したようだな。
「こちら第3隊、負傷者多数!」
「こちら三郎、ヒャハハハハ!奴ら蟻みてえに弱えぜ!ゴリアスの一撃で転がりやがる!飛べ!飛べええぇぇぇ!」
「各隊員に告ぐ。これ以上の侵攻は不可能である。周囲の巨大生物を掃討し撤退せよ」
ヒャハハハ…ハ?
うわーまた馬鹿なこと言い始めたよ。せっかく調子に乗ってきたとこだったのに。本当に足手まといだな。
だが、本部の命令とあらば仕方ない。まだ1匹残ってるが引き返すとしよう。
「まだ敵が残っています。すべての敵を殲滅してください」
06:漆黒
帰り道に迷子になったせいで、なんか変なところに出てきてしまった。夜もすっかり更けている。あれは…ランドマークタワーか?とすると、ここは横浜?
ん…あれはなんだ?
なんかやけに大きい…
いきなり酸をぶっかけられて、ようやく蟻どものど真ん中に出てきてしまったことを理解した。なんだよ!こんなとこにまで湧いてるのかよ!
余裕ブッチといきたいとこだが、この闇夜では奴らは保護色になっていて、姿がよく見えない。
くそっ奴ら進化してやがる!
撤退しつつ苦戦していると、なにかに後頭部をぶつけた。痛え!
振り返り仰ぎ見ると、なんだこれは…ヘリ…か?
いや、たしか入隊式の時に見たことがある。EDF空軍のバゼラートとかいうやつだ。
なんでこんな市街地の真ん中に最新鋭戦闘ヘリコプターが置いてあるのかさっぱり不明だが、ハッチを開けると計器がピコピコいっていた。
こいつ…、動くぞ!
俺は早速乗りこむも、今ごろになって操縦方法がわからないことに気づいた。目の前に蟻が迫ってきている。今さら降りることはできない。動け!動け!
ガチャガチャやってると、脇になにやらマニュアルとおぼしき冊子を見つけた。バゼラートの操縦方法が書いてある。助かった!
えーと、武器、武器は…
×ボタンで上昇、左スティックで移動/旋回、□ボタンで射撃か…
◇⌒ ヽ(`Д´)ノ
およそ戦闘ヘリとは思えない操縦方法で、バゼラートは本当に空へ舞い上がった。ひゃっほう!
そして、およそ戦闘ヘリとは思えない操縦性の悪さに、EDFの構成がなぜ歩兵中心なのかわかったような気がした。(ペイルウィングという特殊精鋭部隊が存在するらしいが、俺は見たことがない)
地上の蟻は暗くてよく見えないので、ランドマークタワーにしがみついてる奴を叩き墜とす。電気がついてるとこを見ると中に人がいるかもしれない。
「見ろ!EDFが来たぞ!」
「やった!助かったんだ俺達!」
バリバリバリガシャーンぎゃーっ
多少の犠牲はやむを得ないのである。蟻優先。むしろ俺優先。
蟻を殲滅し、無事に本部へ帰還を果たした俺を待っていたのは、ロンドン行きの切符だった。そういえば、途中でチョビが心配で勝手に抜け出したんだっけ。仕方ないなぁ。
なんでも、俺がいない間にあのマザーシップが再び出現したらしい。俺は見たことないが、ものすごく巨大でめちゃ強いという話だ。そんなの相手に俺みたいな新兵が加わったところで、なにが変わるというのだろう?
俺はそれどころじゃないんだけど。
チョビ…いったいどこへ行っちまったんだ…。